普段は何気なく食べているものでも、妊娠中は食べることを制限される食品はたくさんあります。
普段は何の問題もなく食べていただけに「食べても大丈夫だったかな?」と後から急に不安になった経験を持つ人は多いといいます。
妊娠中の生ハム、ロースハムを中心にリステリア菌やトキソプラズマの関係についてご紹介します。
ロースハムのリステリア菌が心配。加熱すれば安心?
生ハムはリステリア菌の感染が胎児の成長に悪影響を及ぼす可能性があるとして、摂取を控えるよう指導されますが、ロースハムは大丈夫なのか、気になる人もいるでしょう。
リステリア菌と生ハム、ロースハムについて分かりやすくご説明します。
リステリア菌とは?
リステリア菌は河川水や土壌、動物の腸管内など様々な場所に分布している細菌です。
一般的に妊婦がリステリア菌に感染すると食中毒を起こし、胎盤を通じて胎児に感染し、流産、死産、新生児の死亡などの影響を与える可能性があるといわれています。
100万人あたり4人という確率で発症する感染症です。
万が一、感染した場合の胎児の死亡率は20%と高いため、感染しないよう注意をする必要があります。
リステリア菌による食中毒は重症化するケースもありますが、健康な人が感染しても症状が現れないことがあり、現れたとしても胃腸炎の症状のみで、特別な治療をすることなく自然に良くなってしまうため、自覚症状のないうちに感染してしまっているかもしれません。
もしも、自分が感染してしまったらと思うと、不安になりますが、リステリア菌は他の食中毒のように加熱によって殺菌することができます。
つまり、しっかりと加熱さえすれば怖いものではありません。
ちなみに冷凍をしてもリステリア菌を殺菌することはできません。
冷凍はあくまでも、活動を休止させるだけなので、活動できる温度になれば再び感染力を上げて活動します。
リステリア菌は4℃以下の低温でも、12%食塩濃度下でも増殖してしまいます。
冷凍や冷蔵で流通している生肉(原料肉)にはリステリア菌がついている可能性がありますが、加熱処理をすることで殺菌することができるのです。
妊婦はロースハムを加熱せずそのまま食べても大丈夫?
結論からいうと、ロースハムは加熱をせずそのまま食べても大丈夫です。
ロースハムは豚肉に味付けをし、型に入れ込み、燻煙をかけながら加熱をして作ります。
万が一、原料肉にリステリア菌が付着していたとしても、製造工程の中に加熱の工程があることを考えれば、ロースハムはリステリア菌に汚染されている可能性は極めて低いと考えられます。
ロースハムは加熱食肉製品であるため、食べる前に改めて加熱をせずとも、そのまま食べることができます。
そのため、ロースハムをサンドイッチやポテトサラダなどに入れて食べても基本的には全く問題はありません。
妊婦におすすめロースハム
ロースハムにもいろいろな形状があります。
個包装になっているものやトレー入ってラップをしているものなどあり、基本的にはどれも安心して食べることができますが、個包装になっているものを選ぶとより安心して食べることができます。
また、スライス済のものとブロックのものがありますが、薄くスライスしてあればあるほど「刃」が入っているため、その分汚染されやすい、傷みやすいと判断することができます。
トレーアップされたロースハムも食品メーカーで製造されたものではありますが、一度スーパーのバックヤードなどで開封して小分けにしているものなので、人の手が加わっている分、リステリア菌に限らず汚染される可能性を孕んでいます。
スーパーのバックヤードも管理が厳しくなっているので、基本的には心配する必要はありませんが、小規模展開のスーパーは杜撰な管理をしている可能性を否定できませんので、心配であればトレイパックでグラム売りされているものよりも真空パックに入ったものを選びましょう。
ロースハムは、妊娠中に加熱せず、袋から出してそのまま生で食べたとしてもリステリアに感染するリスクはほとんどないといえます。
ちなみに、ベーコンもロースハムと同じく豚肉を原料とした加熱食肉製品であるため、リステリア菌に感染するリスクはほぼないと言っていいでしょう。
その他、気を付けたいこと
ロースハムに限った話ではありませんが、衛生的に扱うという点に気を付けていただきたいと思います。
常温放置などをせず、保存温度を守り、賞味期限内に食べきることや衛生的な調理をすることが大前提です。
これらのことは他の食中毒の観点からしても望ましいといえます。
もし、不安な点があれば、万全を期すために何でも食べる前に加熱をする習慣をつけるのも一つの手ではあります。
どうしても不安な時は・・・
ロースハムについて、基本的にはそのまま食べても心配がないことはお伝えした通りですが、既に食べてしまい、やっぱり、どうしても心配ということであれば、直接、メーカーもしくはスーパーに問い合わせをしてみると安心できます。
出荷された製品は必ず同じロットのものを検査にかけているため、賞味期限と商品名があれば簡単に照合できるため、そのロットの検査結果が陰性であれば安心できます。
ちなみに、毎日行われるロットごとの検査で万が一、リステリア菌や大腸菌などが検出される事態になっていれば、大騒ぎになっているはずなので、購入したスーパーの店頭や新聞、ホームページなどで回収の案内や社告を目にする事態になっているので、問い合わせるまでもなく、分かるといえます。
リステリアの注意が必要であり、妊婦が気を付けるべきなのはロースハムではなく、生ハムです。
妊婦は生ハムをなぜ食べちゃダメ?
国内で製造される生ハムは食塩などの味付けをした調味液に何日も漬け込みます。
加熱工程はなく、食品衛生法で定められた水分活性といわれる基準に達するようになればできあがります。
その名の通り、生ハムは非加熱食肉製品になります。
万が一、原料肉にリステリア菌がついていた場合、生ハムには加熱の工程がない、つまり、リステリア菌を死滅させる工程がないため、でき上がった生ハムにもリステリア菌が付着してしまっているということになります。
リステリア菌が付きやすい原料肉は豚肉の産地や部位によっても若干違ってくるようです。
国内の食肉メーカーは食品衛生法に基づいた衛生基準に沿って工場を稼働させているので、加熱の工程がある商品については食中毒の可能性はそう高くはありません。
しかし、加熱工程がない生ハムの場合、原料にリステリア菌がついていればそのまま製品になってしまう可能性が高いことは確かです。
国内の食品メーカーは製品を作る度に毎回検査を実施しています。
しかし、メーカーによっては検査結果が出る前に出荷し、検査結果で陽性反応が出た場合に告知や社告などを出して、急いで回収するというケースもあります。
実際に何年か前に生ハムの検体からリステリア菌が検出され、出荷済みのものを大慌てで回収した事例があるのも確かです。
もちろん、出荷された生ハムからリステリア菌が検出されるケースは年に1件もないくらい稀なことではありますが、国内メーカーの物だからと信用しすぎず、妊娠中は生ハムは我慢する方が賢明です。
輸入の生ハムは検査こそしているものの、検査項目、検査精度ともに不安が残ります。
どうしても食べたいということであれば、ピザなどに乗せてしっかりと過熱をすることでリステリア菌の心配はらすことができます。
ただし、生ハムは塩分が高いので妊娠中高血圧の予防のためにも妊娠中はなるべく控えるようにしたいところですね。
ロースハムや生ハムにトキソプラズマの心配はある?
トキソプラズマはリステリア菌と違って、寄生虫の一種です。
こちらは多くの動物が持っている寄生虫の一種で、動物の体内や排泄物、土の中など身近なところに存在しています。
健康な人であれば感染したとしても、ほとんど症状が出ることはなく、出たとしても軽い風邪程度で済むことが一般的ですが、母体を通じて胎児に感染してしまうと、運動神経の遅れ、視力障害、脳性麻痺などの症状が起きる場合があり、最悪の場合は死産につながるケースもあります。
一般的な予防策としては、肉はしっかりと加熱する、ガーデニングや猫の排泄物の処理の際はしっかりと手袋やマスクをすることなどが挙げられます。
ロースハムは先ほどから述べているように、製造工程の中に加熱の工程があるため、基本的にはトキソプラズマに汚染されている確率は低いといえます。
一方、生ハムはというと、こちらも基本的にはトキソプラズマに関してはそう心配はありません。
トキソプラズマは菌ではなく、寄生虫です。
寄生虫は冷凍をすることで死ぬため、冷凍した原料肉を使っている時点でトキソプラズマに汚染されている可能性は低いといえます。
一般的に国内の食肉メーカーが製造している生ハムは冷凍の原料を使っています。
一度冷凍された原料肉を使っている時点で生ハムであっても、トキソプラズマのリスクは低いといえますが、先にも述べたように、リステリア菌のリスクはありますので、妊娠中は控える方が賢明です。
トキソプラズマに感染してるかも・・・と思ったら、どんな検査をしていくのかまとめています。
ローストビーフは妊婦は食べてもいいもとダメなものがあるって知っていますか?
まとめ
リステリア菌もトキソプラズマもどこにでもいるようなありふれた存在です。
これらは加熱をすることで殺菌、殺虫することができますが、製造工程で加熱をしない場合は原料肉にリステリア菌がついていたとしたら、製品になったもにもリステリア菌が付いている可能性があります。
しかし、ロースハムは加熱済みのもなのでリステリア菌の危険性はほとんどなく、ベーコンに関しても同じくリステリア菌の感染リスクはほとんどないと言えます。
ただし、生ハムは製造工程に加熱がないため、リステリア菌が潜んでいる可能性があり、注意が必要です。
トキソプラズマは寄生虫であるため、国内で製造されたものに関しては基本的に冷凍の原料を使っていることを考えるとトキソプラズマの心リスクは低いでしょう。
しかし、リステリア菌が潜んでいるリスクを考えると妊娠中は生ハムの摂取を控えることが賢明です。
必要以上に敏感にならないためにも、また、避けるべきものはしっかり控えるためにも正い知識を身につけることが大切です。
妊娠中の食べすぎを防ぐためにできることを紹介しています。
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