妊婦は生肉を避けるように指導されるため、中身が赤っぽいローストビーフもダメのでは…と心配になりがちです。
生ものには気をつけなくてはいけないということは知っていながらも、たまにご馳走でローストビーフを食べる機会があると、ついつい食べてしまい、あまり馴染みがないので後になって心配になる人も多いといいます。
ローストビーフと食中毒の関係に言及しながら、リスクの低いローストビーフと避けた方がいいローストビーフの違いについてご紹介します。
なぜ、妊婦は生ものを避けるべきなの?
妊婦が生ものを避けるべき理由は食中毒になるのを防ぐためです。
食中毒菌の中には妊娠中に感染してしまうと、早産や流産を招いていしまったり、母子感染によって、胎児の発達に悪影響を及ぼすものがあります。
その代表的なものが、リステリア菌やトキソプラズマです。
リステリア菌やトキソプラズマは健康な大人が感染しても、それほど重症化しないため、一般的に恐れられている食中毒ではありませんが、妊婦にとっては先に述べたようなリスクがあるため、気を付けなくてはなりません。
どちらも加熱によって死滅させることができますが、火を通していない生肉にはリステリア菌やトキソプラズマが付着している可能があるため、妊娠中に摂取することを控えるよう注意が促されています。
トキソプラズマとは?
トキソプラズマはネコの糞や土の中に多く潜み、生の肉にもいる可能性があるとされる寄生虫です。
牛肉に多く含まれるとはあまり聞きませんが、いないともいいきれないため、ステーキなどもきちんと加熱をすることが推奨されています。
トキソプラズマは肉の中心温度が55℃️を5分保つように加熱をすることで死滅、シストと呼ばれる休眠状態の場合でも、中心が67℃まで(あるいはそれと同等の加熱条件で)加熱することが有効とされています。
トキソプラズマは加熱さえ、きちんとされていれば、怖いものではありません。
また、寄生虫であるため、冷凍にも弱く、中心温度が-12℃になるまで凍結させることで死滅させることができます。
リステリア菌とは?
土の中や家畜などに広い範囲で分布しているような菌ですが、健康な人が感染しても影響がほとんどありません。
ただし、4℃以下の低温でも増殖できたり、12%と食塩濃度が濃い環境でも増殖できるため、加熱による殺菌をしない限りはどんどん増えてしまいます。
国内では過去に生ハムやナチュラルチーズ、魚介加工品で検出されています。
ローストビーフは生もの?食べても大丈夫?
ローストビーフは中が赤味がかっているものが一般的ですが、これは生なのでしょうか?
ローストビーフの赤味は生?血?
ローストビーフを切った時の赤い断面は血や生の状態と思いがちですが、ロゼといわれる状態です。
ロゼは生ではく、肉のタンパク質を赤く保ったまま火が通った状態です。
通常、肉のタンパク質は70℃を超えると茶色く、硬くなりますが、中心の温度を55℃前後の低温を保ちながら、長時間かけてじっくりと焼き上げることによって、中心部のタンパク質が変化することなく、中まで火を通すことができるのです。
妊婦にとって安全なローストビーフの基準とは?
ローストビーフを食べて0-157や黄色ブドウ球菌に感染した事例というのはあるそうですが、トキソプラズマやリステリアに感染したという話はほとんど聞きません。
とはいえ、O-157は健康な人でも時には命を落としてしまうような危険な食中毒なだけに妊婦が安心してローストビーフを食べるには食中毒のことを知っておくことは重要です。
ローストビーフの加熱殺菌
「食品、添加物等の規格基準」によると、55℃以上を97分間を保つことが加熱殺菌の条件となっています。
また、同等の条件として、56℃なら64分、57℃なら43分、63℃なら瞬時といった具合に、細かく決められた条件で加熱をすることが求められています。
温度が低い場合はその分、長い時間加熱をしていくことで、しっかりと殺菌をしています。
トキソプラズマの休眠状態であるシストは67℃で完全に死滅するということではありますが、低い温度でも長い時間をかけてしっかりと加熱をすることで、67℃に達することと同様の加熱条件ということになります。
食品衛生法による加熱条件や冷却の温度や時間などを遵守することで食中毒菌を死滅させることができます。
法律に基づいた加熱がされている
加熱条件などは細かく食品衛生法で決められていることは先に触れましたが、それらをしっかりと遵守できるよう、現在は食品の製造・加工、調理、スーパーなどの販売店、個人を含む飲食店など食品を扱うすべての事業者はHACCP(ハサップ)と呼ばれる衛生管理を行うことが義務付けられています。
違反をしたところで、今のところ、罰則はありませんが、万が一、食品の事故が起きた場合は、社会的な信用失墜、営業停止処分など重い代償がのしかかるため、大きな企業であればあるほど、HACCPを順守していると考えてよいでしょう。
食品メーカの場合、毎回、ロットごとに検査をしているため、万が一、何らかの問題が発生した場合でも、回収や告知などの処置を取るので、その点でも安心です。
食品メーカーで製造されたものであれば、商品名や賞味期限で検査結果を照合することもできるはずなので、どうしても心配な場合は確認をしてみるのも一つの方法です。
しかし、個人経営のレストランや規模の小さな工場などにおいてはHACCPが義務付けられているとはいえ、常に衛生基準が遵守されているか疑問があります。
家庭で作る場合も、温度管理が難しく、安心とはいいきれないため、できるだけ控えた方が無難といえます。
冷凍工程がある
先にも述べた通り、トキソプラズマは寄生虫であるため、冷凍することで死滅させることができます。
一般的には冷凍の原料や製品が流通する際は―18℃以下が保たれています。
特に海外の原料肉を使っている場合については、食肉用に加工されてからローストビーフが作られるまでに、長い月日をかけて冷凍されているわけですから、万が一、トキソプラズマが潜んでいたとしても、死滅していると考えて差し支えはないでしょう。
妊婦がローストビーフを食べる時の注意点
妊婦がローストビーフを食べる時は、スーパーで購入できる食品メーカが作ったものを選ぶようにし、手作りやレストランで食べるものは避けられるのであれば避けた方がよいでしょう。
その他、注意点をまとめました。
ローストビーフの保存
スーパーで購入したローストビーフでも、注意が必要です。
ローストビーフは生肉と同じくチルド室(4℃)で保存をしなくてはならず、消費期限も短いものがほとんどです。
もし、保存温度や消費期限を守らなっかた場合、何かしらの食中毒にかかってしまう恐れがるので、注意が必要です。
できれば真空パックのものを選ぶ
スーパーで購入できるものの中にはブロック状で真空パックになっているものと、スライスしてトレーに並べられているものがあります。
基本的にはどちらも食品メーカで作られたものではありますが、トレーに入ったものはスーパーのバックヤードなどで、一度開封してカットやスライスをしたものです。
バックヤードなど食品メーカーの工場で作ったもの以外は温度や衛生管理が徹底されていない可能性もあるため、不安があります。
スーパーのバックヤードでスライスをしている場合、同室で生肉も取り扱いがあることを考えると、万が一、生肉を触った手や器具がでローストビーフに触れてしまった際は、生肉に食中毒菌がいた場合は汚染されてしまいます。
スーパーのバックヤードは企業、店舗の姿勢によっては衛生管理が行き届いていないケースもありますので、注意が必要です。
やっぱり、心配な場合
どうしても、心配な場合はありますよね。
不安をそのままにしておくのはストレスもたまり、胎児にもよくないので、早めに解決をすることが大切です。
スーパーやメーカーに問い合わせる
大手であればそう心配することもありませんが、特に地元の規模の小さなスーパー、あまり流行っていないようなスーパーは衛生管理が杜撰な可能性は否定できません。
もし、既に食べてしまって心配ということであれば、直接スーパーに問い合わせをしてみましょう。
ローストビーフはどこの食品メーカーのものなのか、スライス、包装などの加工はどこでされたものかなどを調べることができれば安心できるかもしれません。
手作りやトレイのローストビーフは厚切りステーキにする
少しでも、心配だなという気持ちでこれから食べるのであれば、バターで断面をさっと焼いてステーキのようにしてしまうのも一つです。
ローストビーフは一般的に牛もも肉を使っているので、火を入れると固くなりますが、海外では厚切りにしてステーキのようにして食べる方が主流なんだそうです。
再加熱をすることで、安心して食べることができます。
やっぱり、トキソプラズマに感染に感染しいるかも・・・と心配なようであれば、こちらも是非、お読みください。

妊娠中、生ハムはダメだけどロースハムはそのまま食べても大丈夫?

まとめ
ローストビーフ自体は生肉ではないため、トキソプラズマやリステリア菌などのリスクはそう高いわけではありませんが、他の食中毒にならないためにも、手作りやレストランで作られたものは避けた方がよさそうです。
基本的に食品メーカで作られたローストビーフは妊婦でも安心して食べることができます。
スーパーで購入する時はなるべく、真空パックのものを選ぶとより、安心して食べることができます。
しかし、家庭やレストランで作ったものは原料肉の状態が分かりにくいこと、加熱がしっかりできている保証がないことから安全とは言いきれません。
また、食中毒のリスクがあることから基本的に避けることをおすすめします。